早朝に目が覚めてから、正午近くまで本を読んでいた　シリカウォーターを一本飲んだほかは何も口にしていなかった　駅の近くまで出掛けることにした

こういう大型のモールは郊外にあるものだよなぁ、と考えてみたらここは郊外みたいなものだと気付いた　大阪府中部の東だから奈良県と隣接している　問題は近鉄の駅が近いことだった
駅が近くても郊外は郊外だけれども、駅が近いと郊外ではないんじゃないかという自分勝手な思い込みが邪魔をした　


バイクを停めてモールの中に入った　めっちゃ涼しい　長袖の厚手のジャケットを着たままでもめちゃめちゃ涼しかった　小用を足しにトイレに向かうと、小便器の前にズボンとパンツを膝下まで下げたオッサンがいた　浮かない顔をして両手は陰茎を支えもせぬまま下げられていた　肝心の小便は出ていない　僕はオッサンを理解することができなかった


鯛焼きを買って外に出た　この炎天下に暑苦しいバイク用のジャケットを脱ぎもせず、火傷しそうなほど温い二匹の鯛焼きを公衆の面前にて食べるヤツは僕だけだった　茹だる　



途中、知らんオバチャンが寄ってきて
『お兄さん、暑ないのん？』と訊いてきた

『そらアツアツやがな』と僕は云った

『せやんなぁ、ほんでな、お兄さんズボンのチャック開いてるで』

すかさず『ワザとです』と返した『ならず者のダンディズムです』
閉め忘れ時にはそう答えることにしていた

オバチャンは『え？何でなん』と訊いてきたから、『そら、暑いからです』と返した『股間の熱を冷ますには脱ぎたくっても、これが限界ですやん』と云った
自分でも苦しい言い訳だと思った


オバチャンは足早に去っていった　ズボンのチャックはその場で閉めておいた


きっと先程トイレにおった不審なオッサンは陰茎を冷ましていたんだな、と独り合点した
それならばなぜ個室に入らなかったのだろうとも思ったが、それはもはやどうでもよかった


僕は鯛焼きを食べ終え、焼け焦げたバイクに乗って帰宅した