自宅から少し離れた場所にある喫茶店





喫茶店の駐車場に【ダーッ！】と書かれたノボリが無数に並んでいる





何にそこまで気合いを入れているのだろう







サッパリわからない




猪木が好きなのだろうか…



ならば店名を『猪木』か『闘魂』にすれば良いと思うのだが、店名は横文字の洒落た店名




『アントニオ』でもいい


ただ店名が『アントニオ』だと店のオーナーがイタリア人だと勘違いしてしまいそうだ



オールバックで胸元が開いたシャツを着て胸毛丸出しのオーナー、アントニオ



真っ二つに割れたアゴからはパスタや美味しいコーヒーが出てくるだろう





そんな喫茶アントニオ




そんなことはどうでもいい



あの【ダーッ！】のノボリには何の意味があるのだろう


店長がシャクレているのだろうか


もしかしたら店員もシャクレているかもしれない



シャクレすぎて店の珈琲やカレーをかき混ぜられるぐらいシャクレているかもしれない


そのコーヒーはアントニオの真っ二つに割れたアゴから出たものだろう







もうアントニオのことは忘れよう


何が【ダーッ！】なのだ？


ダーッ！するほど嬉しい特典がある店なのだろうか？



もしかしてウエイトレスが全員ノーパン？


ノーパン喫茶か？



いやいや、この御時世にノーパン喫茶など有り得ない


もしあの店がノーパン喫茶なら、興奮したアントニオのアゴが耳まで開いて全国の気温が春中旬の暖かさになってしまう




アントニオ、頼むから俺の頭の中から消えてくれ



どんな内容の店なのかわからないが、ダーッ！と言う気分になれる店であるならば行く価値はある


ダーッ！という気分になれるならコーヒーが一杯千円だったとしても良いじゃないか


値段に見合った満足感を得られるならそれで良いじゃないか


ならば行ってみよう


店の駐車場に入った


しかし俺は店に入らず帰った
すぐに帰った




今まで【ダーッ！】と読んでいたノボリがダーッ！ではなく【ダーツ！】であることに気がついたからだ






紛らわしい


紛らわしすぎて腹が立ったが、店に入る前に気がついて良かった




帰り道、水の入ったビニール袋をグルグル回しながら嬉しそうに走る人を見かけたが、アゴは全く割れてなかったので少しだけホッとした



ヒロシ