冷たいお抹茶でヒンヤリ!
『浮世絵 ねこの世界展』でネコの浮世絵を鑑賞後、お抹茶を頂くことにした。
ここ二川宿本陣資料館では、その昔本陣を営む家族が起居した主屋の一室で、お抹茶を頂戴できる。
お菓子付で、300円だ。
夏期限定のサービスとなるが、お抹茶は冷たいものと温かいもの、どちらか好きな方を選べる。
私は、冷たいお抹茶をお願いした。
私が腰を据えた勝手座敷からは、縁側越しに奥庭が見渡せる。
縁側近くには、手水鉢と役石で構成された蹲(つくばい)があり、庭に配された飛び石を目で辿っていくと、やがて朱色をした大きな野点傘(のだてがさ)に行きつく。
この野点傘は、「お抹茶やってます」という目印なのであろう。
お菓子とお抹茶がくるあいだに、床の間の掛け物と茶花を拝見する。
掛け物は、『一華開五葉』と書かれた軸が掛けられていた。
一華(いっか)五葉(ごよう)を開く、と読む。
一輪の花が五つの葉をしげらせ、放っておいてもその実は自然にみのる、という意味。
そこから、家業や子孫の繁栄を祝う、おめでたい言葉として用いられる句であるらしい。
花入れには、まだ実が淡い緑色をした野葡萄(のぶどう)が活けられていた。
さて、お菓子が来たのでいただこう。
菓子皿は、里芋の葉っぱを象ったガラスの器である。
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里芋の葉に溜まった朝露を集め、それで墨をすると字が上手くなる。
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子供の頃、学校の先生にそう言われたので、早起きをして朝露を集めに行ったことがあったなあ……。
また七夕の時、里芋の葉の朝露ですった墨で短冊へ願い事を書くと、その願いが叶うというから、まことに夏向きの器である!
ガラス製の菓子皿の上には、いかにも涼しげな水まんじゅうが乗り、クロモジと緑色のモミジ葉が一つ添えられていた。
程よく冷えた水まんじゅうの皮は、もちもちツルンとした食感。
中のこし餡は、甘さ控えめでサッパリとした味わいであった。
お菓子を食べ終えた頃に、お薄が運ばれてきた。
お抹茶の器も、これまたガラス製だ。
川の流れを連想させるような、淡い水色が器の半分に施されている。
残りの半分には、二匹の沢蟹と水草が描かれていた。
ガラス茶碗へ三分ほど注がれた濃緑の抹茶には、砕いた氷が浮いている。
冷えたお抹茶は、氷で味が薄まるようなこともなく、ちょうど良い加減のお点前だ!
目で見て舌で味わってヒンヤリと涼しくなる、夏のお抹茶であった。