ぴよりんモーニング
各喫茶店が独自のモーニングサービスでしのぎを削る名古屋の朝は、激アツだ!
その有り様は、“モーニング戦争”と呼んでも過言ではない!
いっそのこと名古屋市は、モーニング戦争の後に句点を打ち、『モーニング戦争。(モーニングせんそうマル)』という言葉を、商標登録すべきである。
名古屋の喫茶店は、次々と奇策を編み出しては、我々の度肝を抜く。
まさに名古屋の喫茶文化、恐るべしである。
様々な名古屋モーニングが誕生し、百花繚乱の様相を呈するなか、またぞろ新しい“名古屋モーニング”が産声をあげたのだ!
その“新・名古屋モーニング”は、JR名古屋駅の“うまいもん通り”にある「トラッツィオーネナゴヤ」と言うお店で頂く事ができる。
新・名古屋モーニングの名は、「ぴよりんモーニング」と言う。
いったい「ぴよりん」とは何ぞや?
「ぴよりん」とは、ヒヨコの形をした名古屋発祥のプリンスイーツである。
名古屋コーチンの卵を使ったプリンをバニラムースで包みこみ、さらにそのムースを粉末状にしたスポンジで覆っている。
また、ヒヨコのクチバシ・とさか・目・ツバサの各パーツは、チョコレートで出来ているのだ。
「ぴよりんモーニング」はこのヒヨコ形スイーツ「ぴよりん」と、トーストアートが施された「ぴよりんトースト」、そしてお好みのドリンク、以上の三点で構成されている。
ちなみに「ぴよりんトースト」には、バターと小倉あんが付く。
さて、可愛らしい「ぴよりん」を目の前にした私の表情は、だらしなく緩んでしまう。
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お前さまが、ぴよりんさんかね。デラ可愛いでいかんわ!
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と思わず、河村たかし名古屋市長のようなモッサい名古屋弁が、つい口をついて出てしまう。
では実食!
まずは、ぴよりんトーストから頂こう。
こんがりと焼けたトースト一面に、まんべんなくバターを塗る。
バタートーストにした後、小倉あんをたっぷりと乗せれば、名古屋名物“小倉トースト”の完成だ!
バターの塩分と小倉あんの甘さが、口の中で融合し、妙なる味わいを醸し出す!
小倉トーストは、名古屋のソウルフードである!
ホットコーヒーをすすり、小倉トーストの味をいったん消して、いよいよ真打ちのぴよりんへと取り掛かる。
ぴよりんの小さな体に、スプーンが挿入されようとするその時、微かな話し声が私の耳へと入ってきた。
まじまじと「ぴよりん」を見詰めてみると、ぴよりんがチョコで出来たクチバシをたどたどしく動かしながら、私にこう語りかけるのだ。
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ねぇ、おじちゃん!アタイを食べちゃうの?
もしそうだったら、食べずにアタイを助けておくれよ。
アタイを救ってくれたら、将来は立派なメンドリになってみせるよ!
成長したあかつきには、おじちゃんが一生卵に不自由しないだけの卵を産むからさぁ……。
ねぇ、おじちゃん助けておくれよ!
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ぴよりんに、そう懇願されても困ってしまう。
ぴよりんが立派なメンドリに成長するまで、どれだけの月日が掛かるのか?
はたまた餌はどんな物を与えればよいのか?
そもそも面倒を見るのに、手間は掛からないのだろうか?
ぴよりんを食べずにこのまま救ってあげたいという気持ちと、ぴよりんを食べたいという欲求とがせめぎあう!
しばし考えたのち、私はぴよりんに向かってこう結論を述べた。
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ぴよりん、ゴメン!
おじちゃんは、キミを食べることにしたよ。
だって、キミは名古屋コーチンの卵から出来ているんだろ?
卵から出来上がっているだけに、もともとキミ(黄身)は食べられる運命にあるんだよ!
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と、くだらないオヤジギャグをかましながら、ぴよりんを泣く泣くほお張る私であった……。
ご馳走さま!