濃厚生クリームのシフォンケーキ
「アスナル金山」の2階に、『Mou Mou Cafe(モーモーカフェ)』という生クリームの専門店がある。
メニュー表に記載されていた一文をここで引用すると、モーモーカフェとは……
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いつも控えめで脇役な『生クリーム』が主役を演じるお店
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なのである。
さてその日は、17時頃にモーモーカフェへ到着したのだが、すでにお店の前には行列が出来ていた。
17時と言えば、午後のティータイムもそろそろ終わりを迎える刻限である。
「この時間帯であれば、すいているに違いない」と狙い澄まして来たのだが、私の目論見は、見事なまでに外れたわけだ。
行列の一員となる前にとりあえず、入店待ちのお客を数えてみる。
9人は居るぞ!
してみると、席に着けるのは1時間前後と言ったところであろうか。
「とにもかくにも並ぶべし!」と、行列の最後尾に付いた。
私が行列の殿(しんがり)に付いた後も、次から次へとお客がやって来て、さらに行列は長くなっていく。
待ち時間を利用して、店舗を観察してみた。
店内はソファ席とテーブル席があり、二十名以上は収容できそうだ。
また、店外にはテラス席もあり、こちらも店内と同じぐらのキャパはあるだろう。
列に並んでから40分ほど経ったころ、ひとりの店員さんが私の傍らまで来て、こう尋ねた。
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すみません!ただ今、店内が混み合っておりまして……少し寒いとは思いますが、テラス席の方であれば、直ぐにでもご案内できますが……。
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と。
一刻でも早く生クリームにありつきたい私は、テラス席で食べることにした。
注文の品は、「濃厚生クリームのシフォンケーキ」とアイスコーヒー。
注文をして5分と経たないうちに、すべての品が私の席へと運ばれてきた。
なんじゃ、この生クリーム!
半端じゃないわ!!
コッテリと盛られた生クリームで、ほとんどシフォンケーキの姿が見えなくなっているではないか!
生クリームのメガ盛りである。
いや、そんな手垢のついた言葉では、この生クリームの圧倒的な量感をお伝え出来ない。
それに“メガ盛り”だなんて、すき家の牛丼じゃあるまいし……。
やはりこんな時は、しょこたん風に言うのがよろしかろう。
“生クリームのギザ盛り”とか……
“生クリームのギガント盛り”とか……
“生クリームのギガンティック盛り”とか……。
イヤイヤ、もういっそのこと、しょこたん語における「スゴい」の最上級を使って、“生クリームのビッグバン盛り”と言うべきであろう。
通常は、生地を味わうために生クリームを添えるのだが、このお店はそうではない。
生クリームを味わうために、本来主役であるべきシフォンケーキを、添え物扱いにしているのである。
ここモーモーカフェにおいてシフォンケーキは、もはや生クリームの引き立て役でしかない。
フレンチのメニュー風に言うのであればこうなろう。
「北海道浦幌産濃厚生クリームに、ふわふわのシフォンケーキを添えて」と。
では、実食!
生クリームを匙ですくって口に含んでみると、「おや?これってソフトクリームなのか?」、と一瞬勘違いしてしまうほど粘りけがある。
北海道は浦幌(うらほろ)産の牛乳のみで作られたこだわりの生クリームは、高濃度ながら、後味はスッキリとしていてクドくはない。
いくら食べても飽きのこない、サッパリとした生クリームだ。
ケーキ皿と一緒に運ばれてきた陶器製のピッチャーには、レモンの搾り汁が少量入れられている。
先ずはそのまま生クリームを味わい、半分ぐらい食べたところで、このレモン汁をかけると味に変化がでるそうだ。
私は、「 I Love 生クリーム 」というロゴ入りのTシャツを自腹で制作したい、と考えているほどの生クリーム好きだ!
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レモン汁など、ノーサンキューじゃ!
このままストレートで平らげてやるわい!!
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と思ったのだが……レモン汁による味の変化がどのようなモノなのか、とても気になったので、やはりかけてみる事にする。
レモン汁を注いだ生クリームは、レアチーズケーキのような味わいとなった。
うん、この味もアリだな!
すっかり縁の下の力持ち的存在となっているシフォンケーキだが、こちらに付いても少し触れておきたい。
シフォンケーキは、ボリューミーな生クリームを最後まで飽きずに味わってもらえるよう、フワフワの軽い食感に仕上がっている。
スイーツの世界では、長らく脇役の地位に甘んじてきた苦労人の生クリーム。
この度、初めて主役の座を射止めた生クリームが、スイーツ皿という舞台の上で、一世一代の名演技を披露する!
こやつ、凄味のある芝居で完全に主演俳優を喰ってしまう、松重豊のような生クリームであった……。
ご馳走さま!