金桜(きんざくら)の膳
豊橋市の大岩町にある「 三遠そば処 雪齋 」にて、お昼の御膳を頂いてきました。
ここ雪齋(せっさい)は、普通の一軒家を店舗に改築したようなお蕎麦屋さん。
お店をぐるりと囲むブロック塀は、一般の民家を思わせます。
では、お店の中へ入ってみましょう。
店内には、2人掛けのテーブル席が2つと4人掛けのテーブル席が1つ、そして6人が掛けられる長いカウンター席が1つあります。
目の前がガラス張りになっているカウンター席からは、素敵なお庭を眺めることができます。
枝振り見事な松、燈籠、手水鉢、所々に配された巨岩、庭の一面を覆う苔、石橋(しゃっきょう)、色の異なった玉砂利。
ガラス窓を通して見る庭は、なかなか本格的な日本庭園でした。
この庭を眺めながらお蕎麦を食べてみたいと思い、カウンター席の隅に腰を下ろします。
メニュー表を見ると、お昼の御膳は二種類ありました。
金桜(きんざくら)の膳と金鳩(きんばと)の膳。
この日は、ちょっと奮発をして値段の高い、金桜の膳を注文することにしました。
熱いほうじ茶をすすりながら庭を眺めていると、60歳前後のご婦人が2名やって来ました。
還暦前後の方を、【アラ還】なんて言うようですが、もっと他にいい呼び名はないんでしょうか?
昔の時代劇スター、嵐寛寿郎 (あらし かんじゅうろう)さんも、略してアラカンなんて言われていましたが……。
ちなみに、脚本家の宮藤官九郎さんは略してクドカンです……って、全然関係の無い話ですが……。
アラ還2人と店員さんの会話が、私の背後から聞こえてきます。
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「お兄ちゃん、私、金桜の膳にするわ」
「じゃ、私も同じヤツにして」
「すみません。金桜の膳は、今ちょうど終わってしまいまして……」
「え~っ、残念だなぁ……何とかならんよね?」
「ごめんなさい、もう金鳩の膳しかございませんので、こちらの方ならお二人分ご用意できますが……」
「しょうがないなぁ……じゃ、それ二つください」
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「何とかならんよね?」って言われてもどうにもならないし、それに「しょうがないなぁ……じゃ、それ二つ」って、お店の人に対して失礼やろう!
そんな事を思いつつも、私の背中に冷たい汗が流れる。
金桜の膳の残り一つは、私の分だったのね……。
少々気まずい思いをしているところへ、店員さんがお膳を運んで来た。
「お待たせしました、金桜の膳です!」
すかさず、背後からアラ還の声が聞こえてくる。
「あらっ!あの人よ、金桜の膳をたのんだの……」
何でこんなアウェー感が漂うなかで、食事をしないとイケないんでしょうか?
敵地に赴いてサッカーをする、日本代表選手の気持ちが、今ようやく分かったような気がします。
さて、食事に集中しましょう!
金桜の膳のラインナップは以下の通り。
●かにカマの卵とじが乗った温かいお蕎麦
●海老・舞茸・ジャガイモ・カボチャ・紫芋・シシトウからなる天ぷらの盛り合わせ
●イクラとサーモンのご飯
●キュウリと白菜の漬け物
まずは、お蕎麦からいってみましょう。
だし汁は薄味ながら上品な味わいで、コシのある手打ち蕎麦とよくマッチしています。
岩塩とソバのつけ汁で頂く揚げたての天ぷらは、衣がサクサクとして、とても歯ごたえが良い。
ほんのり甘い醤油ベースのタレがかかったご飯の上には、厚めに切られたサーモンとイクラが、山のように盛られています。
お蕎麦と天ぷらも旨かったのですが、私的にはこのイクラとサーモンのご飯が一番美味しいのではないかと思います。
ご膳を食べ終える頃を見計らって店員さんが、蕎麦湯と蕎麦つゆを運んできてくれました。
もう至れり尽くせりですね!
料理はもちろんのこと、それぞれの食器も凝っており、センスの良さを感じます。
大満足のランチ、ご馳走さまでした!