お正月の室礼
40代後半  愛知県
2022/01/09 18:01
お正月の室礼
1月3日に訪れた、八事・興正寺のお茶室「竹翠亭」の室礼(しつらい)が、とても素敵だったので、画像付きで幾つかご紹介したいと思います。


【室礼】とは、調度や飾りをその場にふさわしく整える、という意味。


竹翠亭へは、端午の節句・紅葉の時期・師走・お正月といったように、何度かお邪魔しています。


訪れる度ごとに、その時節に適った見事な室礼で、私の目を楽しませてくれるのです。


それでは、添付した画像について、順にご紹介していきます。

ーーーーーーーーーーーーー

●室内の松飾り●

金屏風の手前に敷かれた赤い毛氈。

その上に置かれた、二つの飾り物。


長さの違う二本の竹が、紅白の組み紐で結わえられており、短い竹には【餅花(もちばな)】が活けられています。


「餅花」は、しだれ柳の枝に紅白の団子や餅をさしたもので、新しい一年の五穀豊穣を願って作る、たいへん縁起の良いお正月飾り。


竹の隣には、水盤花器に松の枝と笹の葉が活けられています。


玄関や門の両脇に飾る門松は、竹や松や南天や葉ボタンなどを寄せ植えにしてありますが、こちらは別々にした松と竹とが一対になるよう、飾り付けられています。

ーーーーーーーーーーーーー

●御吹絵「富士二日」と鏡餅●

床の間には、『 富士二日(ふじふつか) 』という画題の吹絵(ふきえ)と、鏡餅が飾られていました。


【吹絵】というのは……

まず地紙の上へ、様々な形に切った型紙を置きます。

次に、筆に含ませた墨や絵の具を、息をもってして、それへ吹き付ける。

最後に型紙を取り除けば、絵の完成。

こんな手法の絵画です。

さて、この吹絵の上には「御」の字が付いて、『御吹絵(おふきえ)』と呼ばれています。


察しの良い方なら、もうお分かりでしょう。


この絵は、高貴な方がお描きになったので、御の字が付いているのです。


お描きになった貴人は、尾張徳川家七代藩主 徳川宗春公。


マツケン主演の時代劇「暴れん坊将軍」では、八代将軍徳川吉宗に横槍を入れ、足を引っ張る意地悪な敵役として描かれています。


確か「暴れん坊将軍」では、人相の悪い中尾彬が宗春を演じていたような……。


ですが、実際はそんな暗愚な殿様ではありませんでした。


吉宗は、質素倹約・規制強化を推進しましたが、宗春は「過度な倹約はかえって民衆を苦しめる」と考え、逆に開放政策・規制緩和を実行しました。


宗春のこの政策は功を奏して、当時の名古屋は、京の都をしのぐ程の繁栄を見せたそうです。


現代から見れば、経済の停滞を招く吉宗の緊縮政策より、経済が活性化する宗春の開放政策の方が、正しいと思うのですが……。


幕府から睨まれた宗春は後年、隠居謹慎を命じられ、不幸な晩年を過ごします。


幕府からは一種の罪人として扱われた宗春ですが、今こそ再評価されてもよい人物だと、私は思うのです。


だから私は吉宗より、宗春の方が断然に好きです。


でもでも中尾彬よりは、マツケンの方が断然に好きです!


……って、関係ないか、そんな話。


しかし、こんな貴重な絵を平然とお正月の床の間に飾ってしまうなんて、流石は興正寺!


歴代の尾張藩主が深く帰依した、祈祷寺だけのことはあります。

ーーーーーーーーーーーーー

●カンチン茶屋の猛虎●


お茶室「竹翠亭」を出て、渡り廊下をしばらく進むと、左手側にカンチン茶屋が見えて来ます。


もともと、このカンチン茶屋は、経典を保管していた倉を改装した建物。


重い木の扉を開けると、薄暗い倉の中から、一匹の猛虎が突然姿を現します。


幾本もの竹の飾り物で表現した竹藪。


その後方には、銀屏風を背にした虎の掛け軸が一幅吊るしてあります。


扉を開けた訪問者が、薄暗い竹藪からのっそりと姿を現した猛虎と不意に出くわす、という驚きの演出。


そう、今年は寅年でしたね。


本当にビックリしました。

猛虎だけに、もうコ(猛虎)リゴリだ!


お後がよろしいようで……。



コメントする

…━…━…━…

無料会員登録はコチラ

…━…━…━…