シュヌレ(カヌレ×シュークリーム)
複数の菓子やパンの長所を組み合わせて、新しく誕生した菓子やデザートのことを、「ハイブリットスイーツ」という。
まだまだ人気の衰えを見せないカヌレ。
そのカヌレとシュークリームを掛け合わせた【シュヌレ】というハイブリットスイーツを、今回はご紹介します。
覚王山駅の2番出口のすぐそばに、そのお店はあります。
店名は、「キライナトキ、キライナコト。」という、かなりネガティブな印象を与える名前。
人は甘いものを食べると、幸福な気分に浸れるはずです、辛党の人を除けばの話ですが……。
もっとも、虎屋の羊羮を頬張りながら酒をガブガブと喰らう有名な俳優さんが、昔いましたので……。
一概に、お酒好きな辛党イコール甘いものは苦手だ、とは言えないんですが……。
とにかく、甘味を扱うお店が、こんな悲観的な名前でいいのでしょうか?
いえいえ、この店名には、こんな意味が隠されているのです。
まず、この店名を上下二つに分けて、表記してみます。そして、【ラ】の後ろにスペースを入れてみましょう。
キラ イナトキ
キラ イナコト
↓
キラキラ
そう、二つとも【イ】から後が無くなれば、「キラキラ」という言葉になりますよね。
嫌いなことや、やりたくない事の中にもキラッと輝くものがある。
そういう嫌な事があったからこそ、今があるのだ、と思えることもあるでしょう。
来てくれるお客さまが、キラキラできる切っ掛けを見つける場所でありたい。
そんな素敵な想いのこもった、実はポジティブな店名だったのです!
このお店は、シュヌレの他にも、各種ケーキや雑貨、ボトルドリンクを取り扱っています。
特にボトルドリンクは、ボトルのラベルに好きな文言を印字してくれるので、世界に一つだけのボトルドリンクになるのです。
さあ、お店へ向いましょう!
地下鉄東山線覚王山駅の2番出口から地上へ出て、左手側すぐのところに、目的のビルがありました。
「覚王プラザ」という、たいへん間口の狭いビルです。
このビルの地下1階に、お目当てのお店があるはずなのですが……。
地下へと続く、薄暗くて幅の狭い階段を降りていくと、左右に二軒の店舗がありました。
右側は、何のお店か分かりませんが、電気が消えて閉まっています。
左手側に視線を移すと、木製の重厚感ある扉が閉ざされています。
木の扉には、店名の表記されたネームプレートもなく、コロナに関する諸注意の書かれた貼り紙が一枚あるのみ。
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あれっ!?このビルじゃないのか?
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私は再度、今降りてきた階段を上っていきます。
やはりビルの外壁には「覚王プラザ」のネームプレートがはまっています。
間違いなく、このビルだ!
ネームプレートがないと、会員制の高級クラブか、あるいは秘密結社のアジトかと思ってしまいす。
もう一度、階段を降りた私は、おそるおそるドアの取っ手を引きました。
すると斜め前方に、シュヌレやケーキなどを陳列したショーケースが、目に入りました。
良かった、ココでした!
白を基調とした内装で、清潔感のある洒落乙な店内ですが、ちょっと狭いです。
不動産屋なら、「ココは、何坪ぐらいですね」と言い当てることが出来るのでしょうが、私は不動産屋では無いので、何坪のお店か見当がつきません。
でも、とにかく余り広くないお店です。
店の奥には、イートインスペースがあります。
カウンター席で、4席のみ。
すでにその4席には、うら若き乙女たち3名が陣取り、シュヌレやケーキをつついています。
私が来た時には、すでに2組のお客さんがレジカウンターの前で順番待ちをしていました。
どうやら、この2組は、テイクアウトでシュヌレとボトルドリンクを持ち帰るようです。
さて、私の番が早くもやってきました。
店員さんが、こう私に尋ねます、「テイクアウトでよろしいですか?」と。
「いえ、店内で食べて行きたいんですが!」と元気イッパイに応える私。
その時の私の目は、きっとキラキラと輝いていたかもしれません。
そのやり取りを耳にした、カウンター席の乙女たちが一斉に、私の方へ険悪な視線を注いできます。
「あっ、あの~お客さま。店内でのご飲食ですが、本日は予約制になっておりまして……今日はこの後も予約が一杯なんです。ですから、テイクアウトのみとなりますけど、よろしいですか?」
いやぁ~困った。
この後、何軒かスイーツ店巡りをしようと思っていたので、ココの店のスイーツを提げて他店へ入るのも、すこぶるバツが悪い。
よし、こうなったら、人気(ひとけ)のない所で、すぐに食べよう!
そう決めて、シュヌレのカスタードとチョコレートを一つずつ買って、店をあとにしました。
地上へ出てすぐに、とあるマンションの駐車場入り口を見付けて、シュヌレの入った紙袋を開けます。
ココなら、表通りからは死角になるので、人目を気にせず食べることが出来ます。
まず、カスタードから頂くことに。
シュヌレの生地は、パイ生地とシュー生地のちょうど中間のような食感で、サクサクでいて少々もちもち感があります。
そう言えば、カヌレの外側もカリッとしていましたね。
中のカスタードクリームは、滑らかでかつ甘さ控えめ。
かなりレベルの高いカスタードクリームです。
チョコレートの方も同様、生地はサクモチで、中のチョコレートクリームもカスタードクリームに負けず劣らず、極上の味わいでした。
このシュヌレ、簡単に言ってしまえば、カヌレの形をしたシュークリームなんですが、生地の食感と高品質のクリームを楽しめるスイーツだと思います。
あっ!?食べ終わった俺、キラキラしてるわ!!
美味しいシュヌレ、ご馳走さまでした。