えーっ、俺にくれるの!?
仕事に対しては、手を抜かないと言うのが、私のポリシー。
脇目も振らず、業務に集中していると、私の傍らに影が差す。
こちらを伺う視線が気になり、どうしても作業に身が入らぬ。
一旦、手を休めて、熱い眼差しの送り主へと、目を向ける。
後輩のK君だっ!
「Mさん、今日、ホワイトデーだから、これ上げます」と、K君が、一口サイズのクッキーを差し出した。
「?、?、?……」
そのクッキーを目にした私の脳内に、疑問符が3つ浮かんだ。
だが、一瞬のうちに私は、K君の意図を見抜いた!
どうやら、2月14日に義理チョコをくれた、女の子たちへのお返しとして、例のクッキーを、配り歩いていたようだ。
ところが、配りきれずに余ってしまったクッキーを、どうしたものかと思案投げ首しているK君の瞳に、私の姿が映ったのだ!
K君は、無類のイタズラ好きである。
半分は日頃の感謝の意を込めて、もう半分は私の困惑する顔見たさで、クッキーをくれたのであろう。
冗談には、冗談をもって報いるべきである。
「K君、ありがとう!でも俺、キミにチョコ上げてないけど、お返しなんか貰っちゃってイイの?」
この返答に、K君は次のように返す、
「何に言ってるんですか、Mさん。こんなクッキーぐらいで、大袈裟なこと言わないで下さいよ!本来なら、自分にリボンを付けて、Mさんへ僕を、プレゼントしたいぐらいですよ!」と……。
先方は、ジョークのつもりのようだが、何となくK君の顔が、艶っぽく見えてしまう私。
心なしか、お尻の穴が疼くような感覚に、とらわれる。
本命だろうが、義理だろうが、チョコを貰った男は、倍返し・3倍返しが、女性に対する礼儀であろう。
K君の冗談に対しても、倍返し・3倍返しが妥当であろう!
「K君、悪いがキミなんぞ貰っても、私には使いみちがない!くれると言うなら、キミが付けるといったリボンだけ頂いておこう。リボンなら、まだ使いみちがある。女性へ贈り物をする時の包装用にねっ!」
無論、私とK君は共に、男色家ではない!