茶花を求めて(2)
40代後半  愛知県
2013/05/05 21:15
茶花を求めて(2)
風が強く、初夏とは思えぬ肌寒い日が続いたが、五月晴れの5月4日は、お出掛けには、もってこいの日和となった。

この日、知立の無量寿寺内にある、八橋かきつばた園で開催されている、「かきつばたまつり」へ行って来た。

ここ、知立八橋は、『伊勢物語』の主人公である「昔男」が、水辺に咲く美しいカキツバタを、歌に詠んだ場所として、つとに名高い。

そのため、知立市では、カキツバタが市の花となっている。
ちなみに、愛知県の花も、カキツバタである。

「幸運がくる」というのが、カキツバタの花言葉だそうだ。
園内に咲く3万本のカキツバタを、心ゆくまで堪能したのち、お目当てのお茶席へと向かう。

この日は、お茶室で行われる茶会の他に、野点の茶会も行われていた。

まずは、無量寿寺の境内にある、燕子庵(えんしあん)というお茶室を訪ねる。
カキツバタは漢字で、「杜若」・「燕子花」と書く。

お茶室の名前は、この「燕子花」から、名付けたものであろう。

その名に違わず、お茶室の前の心字池には、あまたのカキツバタが、紫色の花を咲かせていた。

燕子庵は、四畳半の本席と、数寄屋造りの広間からなる、お茶室である。

「どうせお茶を頂くのなら、広間より、本席で頂きたい」と思い、「本席でお薄を頂きたい」と、要望した。

本席に招じられてたのは、私を含めて、5人。

心ならずも、正客とされてしまう。

まぁ、肩肘の張る重々しい茶事ではないので、正客となったこちらも、気は楽ではあるが……。

コレが正式な茶会となると、そうはイカない!

正客は、もてなす側の亭主にとって、一番大切なお客である。

正客は、亭主の話し相手にならなければならない。

つまり、正客は、お茶の作法は無論の事、かなりお茶の世界に精通していないと、亭主との話し相手にはなれないのである。

よって本来、お茶にあまり詳しくない者は、正客を引き受けるべきではない。

床の間を背にして座る私の元に、主菓子が運ばれてきた。

銘「唐衣」という、葛饅頭であった。

『伊勢物語』の昔男が詠んだ、

から衣
きつつなれにし
つましあれば
はるばるきぬる
たびをしぞ思う


この歌より、銘を付けたお菓子である。
紫に着色された葛の中に、こしあんが入っていた。

カキツバタを連想させる、目に涼しげな主菓子である。

正客には、その席でお茶を点てて頂ける、という特権がある。

つづく
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