茶花を求めて(4)
燕子庵をあとにした私は、次に、宗偏流が主催する野点席へとお邪魔した。
野外で催された、こちらのお茶会は、立礼席(椅子に腰掛けて点前をする)とあって、気軽な思いで、お茶を楽しめた。
席についた私の元へ、早速、お菓子がやってくる。
その主菓子は、芯となるこしあんの玉に、そぼろ状のあんをまぶした、きんとんであった。
さて、このお菓子は、一体、何を表現したものであろうか?
うっかりして、お菓子の銘を聞き忘れた私は、後で、つらつらと考えてみた。
その結果、私の脳裡へ浮かんだのは、サツキであった。
緑色のそぼろあんは、球体に刈り込まれたサツキの葉を、ソコへちょこんと乗っかった、紅白のそぼろあんは、サツキの花を、それぞれ表現しているのではなかろうかと、私は思う。
さて、お菓子を頂くと、程もなく、お薄がやってくる。
お茶碗は、端午の節句にちなみ、兜と矢と太刀の絵があしらわれた、清水焼であった。
ふと、ここで疑問が生ずる。
野点は、野外でお茶を楽しむモノだ。
当然、床の間なんぞはない!
では、茶事で一番重要な道具である掛け物と、茶花はいずこに?
この疑問は、すぐに解消する。
何気なく、お点前をしている席へ、目を転ずると、その斜め前には、朱色の大きな野点傘が直立していた。
その野点傘の中棒に、短冊の掛け物と、陶器の壺に生けられた茶花があるではないか!
つづく