茶花を求めて(6)
今日は、岡崎公園内にある立礼席、城南亭へお邪魔して、お薄を頂いて来た。
お茶席の露地からは、徳川家康公が出生した岡崎城を望むことが出来る。
ここ城南亭では、他のお茶席では見られぬ、珍しい趣向が、訪問客のために用意されているのだ。
その趣向とは、抹茶とお菓子を、お客自身で選べるというモノ。
本日の抹茶は、次の2種類。
まろやかでコク深い豊田産の『初昔(はつむかし)』と、ほろ苦く味わい深い西尾産の『翠龍(すいりゅう)』。
お菓子は、
①銘『青梅』~ねりきり
②銘『あじさい』~きんとん
③銘『びわ』~ういろう
④銘「水面」~上用饅頭
以上の4種。
普段、お抹茶の飲み比べなど、する機会もないので、今日は、産地と味わいの違う二つの抹茶を頂くことにした。
まずは、豊田産の初昔と、きんとんの「あじさい」を頂戴する。
徳川家の家紋、三つ葉葵をあしらった、清水焼のお茶碗で頂く初昔は、なるほど、抹茶特有の苦味が少なく、まろやかで、とても飲みやすいお薄であった。
コレなら、お子様でも、抵抗なく飲めるお薄ではなかろうかと思う。
少し間を置き、次は、西尾産の翠龍と上用饅頭の「水面」を頂く。
宝珠窯(長崎県佐世保市にある窯元)産の刷毛目茶碗で頂いた翠龍は、苦味が際立つ、「コレぞ、抹茶なり!」と言うべき、通好みの味わい。
さて、床の間に目を転ずると、そこには『喫茶去(きっさこ)』と墨書された掛け物があった。
「喫茶去」は、お茶の世界では、大変有名な禅語で、「どうぞ、お茶でも召し上がれ」、との意味である。
そして、本日の茶花は、飛燕草(ひえんそう)という紫色の花。
杜若といい、藤の花といい、この飛燕草といい、何故かしら当月は、紫の花とご縁が深いような気がする。
また、岡崎にほど近い、藤川と言う土地では、この時期、紫色の穂が実る、「むらさき麦」が、見頃を迎えるのだ。
アノ松尾芭蕉が、このむらさき麦を目にして、
ここも三河
むらさき麦の
かきつばた
という句を詠んでいる。
蛇足ながら、私も、芭蕉のひそみに倣い、飛燕草で句を詠んでみた。
下手くそである事は、言うまでもないが、そこは素人のお遊びと、平にご容赦願いたい。
喫茶去の
脇を務める
飛燕草
茶席にも
かきつばたあり
飛燕草
お粗末さまでした……。
おわり