美人局で五・七・五
人生には、様々な出会いがある。
愉快な出会いもあれば、惨めな出会いもあり、運命的な出会いもあれば、一期一会の出会いもある。
“危険な出会い”、これもまた、数ある出会いの内の一つであろう。
殊に、美人局との遭遇なんぞは、「危険な出会い」の最たるモノではなかろうか。
「美人局」と書いて、「つつもたせ」と読む。
これは、夫婦や恋人が共謀して行う、恐喝行為のことである。
まず女が、甘言を以て、獲物となる男を、ホテルまで誘い出す。
寝床の中で、いざ事に及んでいると、いきなり男が踏み込んで来て、「やい!よくも俺の女に手を出しやがったなっ!!」、と喚き立てる。
情事の現場を押さえられれば、標的にされた男も、言い訳は出来まい。
畢竟さんざんに脅された挙げ句、法外な示談金をふんだくられる。
誠にどうも、情けないやら、馬鹿馬鹿しいやら、恐ろしいやらで、カモとなった男にしてみたら、とんだ災難である。
さて、今回の日記は、この美人局を川柳のお題としてみた。
=========
◇強面の
赤いツラ見て
青くなり
解説:濡れ事の真っ最中に、強面(こわもて)の男が、真っ赤な顔で、突然押し入って来たら、カモ男の顔色も青ざめるに違いない。
◇傷物に
されたと女
臑(すね)を指し
解説:やましい事をしている訳だから、元々この女の臑には傷があろうに、傷物にされたとは、笑止千万。
◇太い奴
罵声を浴びて
細くなり
解説:図々しいヤツを、俗に「太い奴」と言うが……興奮し太くなっていたカモ男のアソコも、強面に面罵されて、みるみるしぼんでゆく。
◇何事も
最後は金で
片が付き
解説:江戸時代、不倫が発覚すると、密通した男女は、重ねておいて、四つに斬られたそうだ。
しかし、こうなる事は稀で、大概は示談金を支払う事で、決着が付いたと言う。
事実、古川柳にも、「その罪を 許して亭主 五両とり」とか、「据えられて 七両二分の 膳を食い」という句が残っている。
示談金の相場は、ハナが五両で、時代が下がると、七両二分に値上がりした。
さて、現代の相場はいかほどであろうか?
◇火遊びで
大火傷する
馬鹿な間夫(まぶ)
解説:一夜限りの火遊びで、大火傷を負った、バカな間男。
◇赤貝を
食わず後悔
たんと食い
解説:俗に女性器を、「赤貝」なんぞと言うが、その赤貝を食いそこねて、後悔という名の貝を、たらふく食べるハメになった。