図書館の主(あるじ)
今回は、『図書館の主』というマンガについて書きたい。
篠原ウミハルによるこの漫画の単行本は、現在8巻まで刊行されている。
私自身、さほど漫画に精通している訳ではないが、この漫画のように、児童書や児童文学をテーマにした作品は、珍しいのではないだろうか?
この作品は、児童書のみを専門に取り扱う、「タチアオイ児童図書館」を主な舞台として、ストーリーが展開されてゆく。
とある公園内の一角にあるこの図書館は、大企業「古手川グループ」の会長古手川葵がオーナーを務める、私設の図書館である。
ここに、御子柴貴生(みこしばたかお)と言う、名物司書がいる。
無愛想で口が悪く、館内で騒々しい者がおらば、容赦なく叱声を放つような至極取っ付きにくい人物だ。
しかし、子供たちには、何故かしらウケがよく、そのマッシュルームカットの髪型から、「キノコ」であるとか「キノコのお兄さん」と呼ばれ、親しまれている。
また、児童書に関する彼の知識は、人並みはずれており、作者や作品名が分からない本でも、あらすじさえ聴けば、たちどこにその書物を探り当ててしまう【スーパー司書】でもある。
司書としてはズバ抜けて優秀であるが、人としては偏屈な御子柴が、この作品の主人公だ。
このマンガに登場する人物たちは、何かしらの悩み事や不安を抱えている。
自らの意固地によって、父と距離を置くようになった息子。
いま一歩の踏み込みが足りずに、お互いを理解し合えない母と娘。
自身の極度な過保護によって、息子と良好な関係を築けないでいる母親。
社交的で華やかな姉に対し、心密かに対抗心を燃やす地味で大人しい妹。
家族間の悩み事で頭を抱える人びとの前へ差し出される、【児童書ソムリエ】御子柴お勧めの一冊が、問題解決への糸口となる!
子供向けの書物と言って、侮るなかれ!
児童書や児童文学は、とっても奥が深いのだ!
グリム童話やアンデルセン、『にんじん』に『トロッコ』に『若草物語』などなど、衆知の名作からマイナーな作品まで、ズラリと出てくる児童書の玉手箱。
マンガ好きな人には是非とも、イヤ、本が大好きな人にこそ、このマンガをお勧めしたい。
さて、御子柴のセリフに、次のようなモノがある。
『お前が本を選ぶんじゃない!本がお前を選んだんだ!』
運命的としか思われない本との出会いって、確かにあるよなぁ……。