乃木坂顛末記(後編)
だがしかし、次に予期せぬ事態が起こるのだ!
レジでの精算が済み、釣り銭を私に手渡した店員は、「ありがとうございました!」と深く頭を下げ、その顔に営業スマイルを維持したまま、この私を、店から追い出そうとするではないか!
私は、心の中でこう叫ぶ!
【おいおい、お姉ちゃん!何か忘れてないか?俺、対象商品のパンを二つ買ったよなあ!だったら、乃木坂っぱえびせんくれよっ!!】
でも、気の弱い私は、「乃木坂っぱえびせんをください!」とは、ついに言い出せず、店をあとにしたのだ。
四十を越えたオッサンが、アイドルの限定グッズに固執するなど、まったくもって、薄みっともない。
たかだかこれしきの事で、ムキになろうものなら、あのうら若き女店員に、どのように思われるであろう。
「あのオヤジ、乃木坂46のファンだよ!ヒヒヒヒッ!ああ~キモッ!!!」って思われるに違いないのだ!
もし誤って、「乃木坂ファンのキモオタ」と認定されれば、もはやあの店の敷居は、二度とまたげまい!
件のうら若き女店員の蔑んだ眼差しに耐えられるほど、私のハートはタフではないのだ。
車へ戻った私は、パンを取り出そうと、コンビニの袋の中へ手を差し入れる。
すると、小冊子のようなモノが、手に触れた。
見ると、それは、今回のキャンペーンの詳細が書かれた小冊子であった。
例のパンの項目を見ると、次のように書かれてある。
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【引換方法】
対象のパン2個と、引換券1枚をレジに持って行く!
各店先着115名様
※無くなり次第終了
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そうかっ!パンと一緒に、引換券をレジへ持って行かないと、「乃木坂っぱえびせん」は貰えないんだ!
無知ほど恐ろしいモノはない。
俺の単純なミスである。
そのカラクリさえ分かれば、簡単なことだ。
早速明日、リベンジを果たそう!
翌日の仕事帰り、セブンイレブンへ立ち寄った私は、先着116人目とならぬよう、慌てて、パンの陳列棚へと急いだ。
「あれっ!無いっ!!引換券も、キャンペーンの告知文も!!」
そう、結局私は、先着115名様のうちに入れず、「乃木坂っぱえびせん」を食べ損ねたのであった……。
おわり