キャッツカフェとは?
無知とは、恐ろしいものだ!
夕方、車を走らせていると、はるか左手前方に、「キャッツカフェ」という看板が目に入った。
【おっ!こんな所に、今、流行りの猫カフェが出来たのかっ!】
実家で飼っていた愛猫のチンチラ・シルバーが天に召されて、はや4、5年が経つ。
エサを欲する時と、構って欲しい時以外、人間なんぞに見向きもしない、自己チューな生き物、それが猫である。
用の無い時は、人に対してひどく冷淡であるが、好物の削り節なんぞを、鼻先にちらつかせると、手のひらを返すように、態度を急変させるのだ!
「にゃ~ぁ~、にゃ~ぁ~」と甘い鳴き声で、ご主人様へ近づき、しなやかな体を、足下にこすりつけてくる。
猫の最大の魅力は、まさにこのツンデレぶりにあろう。
【久々に、猫たちとふれあいたい!思う存分、猫たちを撫でまわしたい!】
この抑え難い衝動に、私の車は、キャッツカフェの駐車場を目指して、まっしぐらである!
【さぁ、店のこの扉を開けば、あまたの猫たちが、私の足下にすり寄ってくるに違いない!その時、私は、その中から、一番かわいい猫ちゃんを抱き上げて、頬擦りするであろう〓】
店の中に足を踏み入れた途端、私の期待は儚くも裏切られることとなる。
猫の子一匹いない、広い広い店内には、元気のよい人間の子供たちが三匹ほど……いやいや、三名ほど、奇声を発しながら飛び回っていたのだ!
単なるカジュアルレストランを、その店名から、猫カフェと勘違いしてしまったのである!
店に入った以上、飲み食いせずに立ち去ることは出来まい!
時刻は、17時半を少し過ぎていた。
晩飯には、いささか早く、ティータイムには、いささか遅い。
本当に、中途半端な時間帯である。
写真つきのメニューを、丹念に見てゆくと、食事とドリンクとスイーツがセットになった、私好みのメニューがあるではないか!
そこで、私は、「特製木の子ハンバーグ」に、アイスコーヒーと本日のドルチェを注文した。
シメジ・舞茸・エリンギの3種のキノコがのっかった、「特製木の子ハンバーグ」は、本日のスープ・サラダ・ライスorパンが付いて980円。
ドリンクのアイスコーヒーは、そこへ100円を足し、本日のドルチェは、更にそこへ280円を足すと、注文が可能となる。
しめて、1360円ナリ、消費税抜き。
ハンバーグのソースは、デミグラスソース・トマトソース・和風ソースの3種類から一つ選択できる。
私は、デミグラスソースを選んだ。
さて、テーブルに運ばれてきたお皿を見て、そのボリューム感のなさに、私は驚愕した。
【おいおい!メニュー表の写真と全然違うやないかっ!】
好きな男の前で、「私、あんまり食べない子だから」と少食アピールをする女子には、ピッタリの量であろうが、働き盛りの私には、かなり物足りない量である。
これでは、「本日のドルチェ」とて、油断がならぬ!
私のこの予感は、食後、ズバリと的中する!
アイスコーヒーと共に運ばれてきた「本日のドルチェ」は、レアチーズケーキと角切りの黄桃をのせた杏仁豆腐であった。
そのドルチェを盛った白いお皿の大きいこと大きいこと、その2種類のドルチェの小さいこと小さいこと。
レアチーズケーキは、一口サイズならぬ二口サイズで、杏仁豆腐の量たるや温泉卵サイズだ!
ミニドルチェの乗ったお皿は、余白だらけである。
日本人の好む「余白の文化」は、このドルチェにも脈々と受け継がれていたのだ!
料理はいずれも、可もなく不可もなく、無難な味だが、ボリュームの点で少々物足りなさを感じた。
最後に一言、キャッツカフェは猫カフェではない!
………って、俺がただ単に無知なだけか……。