【かき氷屋 川久】のかき氷
話はいささか前後する。
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ローストビーフ丼を食べるため、順番待ちの行列の最後尾へ、一旦付いた私たちだが、そろそろ冷たいものでも口にしなけば、本当に参ってしまう。
タイミング良く、JDが「かき氷を食べながら、順番待ちをしよう」、と提案してくれたので、それに従うことにした。
ランチとデザートの順が逆にはなるが、まず冷たいものを体内に採りこんで、体温を少しでも下げることが先決である!
大須へと来た目的は、二つあるのだ。
一つは『レッドロック』で、ローストビーフ丼を食べること。
もう一つは『かき氷屋 川久』のかき氷を食べることだ。
その川久(かわきゅう)は、『レッドロック』から指呼の間にある。
一分ほどで、川久の前に到着したのだが、ここも長い行列が出来ていた。
『かき氷屋 川久』は、氷の卸問屋【氷屋 川久】が経営する店舗である。
ここのかき氷が人気となる理由は、3つあるだろう。
まず、かき氷に使う氷が、日本各地の銘水氷であること。
その次が、特注のかき氷マシン【氷屋川久ブラックスワン】で削った氷の食感が、「ふわっふわ」であること。
最後が、苦心惨憺して開発した、川久オリジナルの氷シロップの旨さであろう。
なんと、川久の氷シロップは、30種類もあるのだ!
味もさることながら、その種類も豊富である。
ここは、イートインではなく、テイクアウト・前払い制で、お金を払った後に、プラスチック製のカップと大きい受け皿を渡してくれる。
ちなみに、かき氷一つの値段は500円で、シロップは二種類(ここではWシロップと呼ばれている)にしても、値段は同じ。
しかも希望すれば、練乳をただで掛けてくれる。
うーん、30種類もシロップがあると、コレは悩む!
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あまおう、マンゴー、パイナップル、パッションフルーツ、りんご、巨峰、カシス、みかん、柚子、抹茶、紅茶、メロン、グァバ……などなど
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隣にいるJDも、しきりと悩んでいる様子であったが、ふとこんな事を言い出した。
『私、ラ・フランスが気になるんだよね……うーんっ……じゃあ私、ラ・フランスとあまおうにする』
私は心の中で、こう呟く、【あまおうはベストな選択だけど、ラ・フランスかあ……ちょっと味が淡白すぎて、かき氷のシロップとしては弱くないかなあ】と。
JDがシロップを決定した後も、更に悩み続ける私。
こんな時は、その店の店員に、オススメを聞くのが一番である。
二人分のお金を払って、カップと受け皿を貰った私は、すかさず店員の若いお兄さんに、オススメを聞く。
『そうですね、俺、ここで、四年やってますけど、毎年食べるのは、ラ・フランスですね。ほんと、ラ・フランスが一番ウマいっすよ!あっ、あとマンゴーとかグァバもウマいっすよ』
いやいや、JD恐るべしである!
JDの一番気になったシロップが【ラ・フランス】で、店員のイチオシがこれまた【ラ・フランス】。
このJDの眼力は、確かなものだ!!
ズラリとかき氷マシンが並ぶブースの前で順番を待つ私は、やっとココにきて、二種類のシロップを決めた。
【ラ・フランスとマンゴーにしよう】
かき氷の下の層にはマンゴーのシロップと練乳を掛けてもらい、かき氷の上の層にはラ・フランスのシロップを掛けてもらった。
削られた氷の食感は、まさしく「ふわっふわ」で、熱をもった口の中でゆっくりと優しく溶けてゆく。
シロップの方も、ただ甘いだけの氷蜜とはモノが違う!
まるで搾りたての果汁を、削った氷へそのまま注いだかのように、果物の持つ本来の風味を感じさせてくれるシロップであった。
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さて、ここでまた、話は前後する。
ローストビーフ丼を食べ終えて、商店街をぶらぶらしていると、前方に何やら人だかりができている。
人気レイヤーでも来ているのかと、興味本位で覗きに行ってみると、何とソコには、もっさい名古屋弁でお馴染みの河村たかし市長がいたのだ!!
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もしかして、河村市長、この後、【世界コスプレサミット】へゲスト出演して、名古屋市の観光PRでもするのかなあ……シャチホコのコスプレでもして……
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金のシャチホコの被り物をした河村市長が、こんなマイクパフォーマンスをする姿が、ふと脳裡に浮かぶ……
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名古屋は、デラええとこだでよ~!
どでかいエビふりゃ~もあるし、屋根より高いシャチホコもあるでよ~!
まあ、いっぺん名古屋へ来たってちょ!
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……って、そんな事するワケないかぁ。
河村市長に握手をしてもらった後、私とJDは、一路名古屋駅を目指して、大須をあとにした。