レアチーズホットケーキ
40代後半  愛知県
2016/08/31 19:16
レアチーズホットケーキ
「ホットケーキと珈琲の店」三愛(さんあい)へ再び訪問した。


この小さな喫茶店は、【ホットケーキの聖地】と呼ばれているので、ここへと赴くことを、私は秘かに『三愛詣で』と唱えている。


私は今、【喫茶店】と書いたが、間違っても、【カフェ】などと言ってはイケない!


【カフェ】なんて言葉を、ここのマスターが耳にしたら、何と言うだろうか。

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ナニっ!カフェだって!?

お客さん、冗談言っちゃいけないよ!

ウチは、純然たる喫茶店であって、そんな洒落乙な所じゃないの!

そういうオシャンティーな場所なら、駅前に沢山あるから、ウチじゃなくてソチラへ行ってくださいな!!
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チョイと頑固そうなマスターだから、それぐらいの啖呵を切って、店からつまみ出されるかもしれない!


ここは、昔ながらの喫茶店である!


今時のカフェのようにお洒落ではないが、提供してくれるホットケーキは、充分にオシャンティーだ!


さて、三愛のホットケーキには、特筆すべき点が二つ有ると言ってよい。


まず一つ目は、その種類が豊富であること。二つ目は、視覚的に楽しませてくれることだ。


ここのホットケーキのように、装飾が芸術の域にまで達しているスイーツのことを私は、【アート系スイーツ】と呼びたい!


三愛へ来るといつも、メニュー選びに頭を悩ますことになる。


メニュー表を眺めながら、指折り数えたわけではないので、いったい幾種類のホットケーキが存在するのか、私には分からない。


だが、お気に入りのメニューを持つ常連客でない限り、メニューの選定に誰もが、それなりの時間を要することだけは、確実であろう。


あれこれと迷った末に、今回は、【レアチーズホットケーキ】を頼むことにした。


先に運ばれて来たのは、この店ご自慢のコーヒーである。


こだわりの珈琲をちびちびと啜りながら待っていると、甘い香りのする焼き立てのホットケーキが、程なく私の眼前へその姿を現した。


狐色に焼けた二枚のホットケーキの上には、フレッシュなチーズクリームがふんだんに盛られている。


量感のあるクリームの中央で、犇めくように身を寄せ合う10粒のブルーベリーが、紫色の光彩を放つ。


このホットケーキをどの様に形容するべきか?私には、こう見える!

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上等なシルクを敷いた木製の桶の中へ、今収穫したばかりのブルーベリーをたっぷりと詰め込んだ様子。

きっと、高貴な方への贈答品に違いない。
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ホットケーキの茶色、チーズクリームの乳白色、ブルーベリーの紫色、ミントの葉の緑色……いずれも派手な色ではないが、その淡い色彩が、目に清々しく映る。


このレアチーズホットケーキ、まるでアンドリュー・ワイエスが描く水彩画のようではないか!


しかし、チーズクリームが乗っかっている座布団が、二枚というのはいかがなものか?


これでは、面白くない解答で、なかなか座布団の数が増えない、『笑点』の好楽師匠のようで、実に気の毒だ!


もう一枚座布団があれば、安定感が出そうな気がする。


先代の圓楽師匠のように、歯切れよい江戸弁で、調理場へ向かってこう言いたい!


『おーいっ!山田くん!!レアチーさんに、一枚やってくだはい』と……。

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では、ホットケーキを頂いてみよう!


まず、このチーズクリームであるが、見るからに、コッテリとしてクドそうなのだが、然(さ)にあらず !


甘さ控えめで、サッパリとした味わいだ!


これならば、ガラス製のピッチャーに入ったメイプルシロップを、ナミナミとホットケーキへ注いでも問題はない!


今回、私が一番驚いたのは、クリームの中央に置かれたブルーベリーの味であった。


「ブルーベリーは酸っぱいものだ」、という先入観が私にはある。


しかしながら、ここのブルーベリーは、非常に甘いのだ。


品種によっては、酸味より甘さの方が勝るブルーベリーが、確かに存在すると言う。


私は、【ブルーベリー博士】ではないので、それがどんな品種かは分からない。


兎に角、こんなに甘いブルーベリーを食べたのは、生まれて初めてのことであった。


肝心要のホットケーキは、表面はパリッと、中はフンワリと仕上がっており、ホットケーキそのものが大変に美味しいのだ。


本当はクリームや果物など、余分なモノを乗せずに、プレーンで頂いた方が、ここのホットケーキの真価が分かるのかもしれない。



それにしても、いまだ口にしていない未知なるホットケーキのことが、気にかかる。


「いっそのこと、一年ぐらいかけて、この店の全てのホットケーキを平らげてやろうか」と、心密かに大望を抱く私であった……。


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