Qの答えとY画伯
前回の日記で出題したクイズの答えは、この日記の末尾でお知らせします。
では、『放浪の天才画家 山下清展』の続きです。
当展覧会では、山下清の代名詞とも言うべき貼絵の他に、鉛筆画、ペン画、水彩画、油彩画、清自身が絵付けをした陶磁器などが展示されていました。
マジックペンで絵を描くペン画は、一度描くと修正出来ないところから、普通の画家は嫌うのですが、清は好んでこのペン画を描いたようです。
清の場合は、描く前からすでに、完成した絵のイメージが頭の中にあったので、後はただそれを、画紙に引き写すだけでよかった。
筆運びに迷いが無ければ、絵の修正も不要なので、ペン画は彼の性に合っていたのかもしれません。
一方、油彩画は、絵の具が乾かない事には、次へと進めませんので、脳内のイメージをいち早く形にしたい清にとっては、苛立ちすら感じたことでしょう。
そのせいか、清の油絵は、さほど多くは残っていません。
山下清が、陶磁器の絵付けをしていたなんて、この展覧会へ伺うまで、私は全く知りませんでした。
壺や皿など、曲面に絵を描く、陶磁器の絵付けは、とても難しいそうです。
しかし、清は、ほんの数ヶ月でその技術を習得したといいますから、彼の集中力と物覚えの良さは、尋常ではありませんね!
この展覧会では、展示パネルに記されている、山下清語録も見所の一つなので、わたくしお気に入りの言葉を幾つかご紹介します。
『放浪記』と表紙に書かれた、山下清直筆の日記が展示されていました。
日記には、放浪中の出来事が、細かい文字でびっしりと書き込んであります。
その清の文章には、句読点が一切ありません。
「なぜ、あなたの文章には、句読点が無いのか?」と聞かれて、清はこのように答えました。
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人と話す時は 点やマルとは言わないんだな カッコとも言わないんだな
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思わず、クスッと笑ってしまいますが、彼にしてみたら、書き言葉も話し言葉も、同じ言葉なんだから、余計なモノは省いても構わない、と考えていたのでしょうか?
次の言葉は、おそらく、創作の極意を語ったものと思われます。
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自分が良いところへ行こう行こうと思うと少しも良いところへは行かれない
良いところへ行こうとしなければ 自然に良いところへぶつかる
良いところへ行こうとするから 良いところへぶつからないんだろう
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必要以上に肩へ力が入ると、何事も上手くいかない時があります。邪念を捨て去って、無心で事に当たると、思いの外、ウマくいく場合がある。
ウ~ン、なかなか含蓄のある言葉ですね!
さて、彼の貼絵の代表作『長岡の花火』の傍らのパネルに、清のこんな言葉が書かれていました。
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みんなが爆弾なんかつくらないで
きれいな花火ばかりつくっていたら
きっと戦争なんて
起きなかったんだな
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清は、花火が大好きでした。
花火大会があると耳にしたら、どんな遠方であろうと出掛けていって、花火見物をしたそうです。
山下清は、49歳のとき、脳溢血で倒れて、そのまま帰らぬ人となりました。
脳溢血で倒れるその日の晩は、家族と共に夕飯を摂っていました。
その折り、清はこんな事を言ったそうです。
『今年の花火はどこへ行こうかな』
これが、山下清の最期の言葉となりました。
地上から打ち上げられる花火を、今も空の上で、楽しげに眺めているのでしょうか、清は……。
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お待たせしました。クイズの答えです!
正解は、3番の【5個の石ころ】でした。
この石ころは、護身用の石で、犬が苦手だった彼は、犬に吠えられた時に使おうと、つねに持ち歩いていたようです。
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なお、当日記に添付した画像は、山下清画伯の貼絵『長岡の花火』です。