和菓子『散り紅葉』
現在、名古屋では、『和菓子で巡る~名古屋 お茶会スタンプラリー2016秋』というイベントが開催されている。
茶室のある市内10カ所の施設で茶会が催される、という行事だ。
このイベントのコンセプトは、「各茶会で出される名古屋のおいしい和菓子を楽しんでもらたい」というものなので、和菓子にスポットを当てて、日記を書いてみたいと思う。
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とき:平成28年11月20日(日)
ところ: 富部(とべ)神社にて
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地下鉄桜通線の桜本町駅で下車し、15分ほど歩くと、その神社がある。
津島神社の摂社の一つで、疫病退散の神として信仰されていた『蛇毒神(じゃどくしん)』を勧請して、小さな祠を建てたのが、この神社の起源だ。
時の清洲城主、松平忠吉(徳川家康の四男)が病に悩まされている時、この蛇毒神に病気平癒を祈願したところ、日ならずして回復したという。
松平忠吉は、感謝のしるしとして現在の地に、本殿・拝殿・祭文殿・廻廊を創建し、祠の蛇毒神をここへ勧請した。
これが慶長11年(1606)の出来事なので、富部神社は四百年以上の歴史を持つ古いお社だ。
この日の茶会は表千家の主催で、社務所にある茶室で行われた。
社務所の入り口へ足を踏み入れると、すぐ左手側に、お茶室が見える。
半畳の畳9枚を正方形に敷いた、四畳半のお茶室で、真ん中の半畳に炉が切ってある。
床の間のある壁を除いた三方は、壁や襖や障子をしつらえず、開け放ちの状態となっていた。
とても開放的で、モダンなお茶室である。
床の間の掛け物は、モミジの絵の描かれた扇が掛けられていた。
その扇には、『綾錦』という文字が認められている。
表千家の当代家元『而妙斎(じみょうさい)』の書である。
茶花は、西王母(せいおうぼ)という椿のつぼみと、ハシバミの枝葉。
花入は、砧形(きぬたがた)の南蛮焼である。
さて、お待ちかねの和菓子が、目の前へと運ばれてきた!
本日のお菓子は、散ったモミジの葉っぱをかたどった、『散り紅葉』という練りきりである。
【練りきり】とは、白餡(しろあん)につなぎの食材を入れて、細工や着色をほどこした生菓子のことだ。
『散り紅葉』とは、また耳に心地よい響きである。
日本人は、散ったモミジの葉っぱですら、晩秋の風物詩として愛でてしまうのだ。
紅いモミジを、ひとかじりすると、中には上品な味わいのこし餡が入っていた。
この嫌みの無い甘さに、苦いお薄がよく合う。
四畳半のお茶室の中に、席主とお点前をする人と御客が9人。
計11名でのお茶会は、少々窮屈であったが、とても和やかなひと時であった。
社務所を出て、境内を眺めていると、拝殿わきにある大きなイチョウの木が目に入る。
紅葉の時期も終りかけていたが、この神社のイチョウの葉は、今がちょうど見頃のようで、実に発色良好な黄葉であった。