端午の節句の室礼~竹翠亭~
40代後半  愛知県
2017/05/09 7:45
端午の節句の室礼~竹翠亭~
竹翠亭では、「季節の室礼~端午の節句を祝う~」と題して、男の子の節句にちなんだ飾り付けがされていました。


室礼(しつらい)とは、季節に合わせた書・花・物などを、床の間や玄関などに飾ること。


では、様々な飾り付けを順に見ていきましょう!



●まず、旧日下部邸より移築した相碾門(そうてんもん)の屋根瓦には、菖蒲の葉が乗っています。


幕末、八月十八日の政変で京都を追放された七人の公家のうちの一人、東久世 通禧(ひがしくぜ みちとみ)が、明治になってから、こんな和歌を詠んでいます。

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軒に葺(ふ)く てぶりは絶えて

あやめ草

花のみ映える 世となりにけり

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歌の意味はこうです。


「端午の節句に、菖蒲の葉を軒先へ挿すという習慣は絶えてしまい、新しい物ばかりが持て囃される世の中になってしまったなあ」


和歌の中にある【てぶり】とは、習慣・風習という意味。


香気の強い菖蒲(しょうぶ)の葉は、邪気を払うとされて、端午の節句には家の軒先へ挿すという習慣がありました。


ちなみに、軒に挿す菖蒲は、綺麗な花をつける「ハナショウブ」とは全く別物です。


「ハナショウブ」はアヤメ科の植物で、軒に挿したり菖蒲湯で使用する「菖蒲」はサトイモ科の植物なんですよ!


歌の中に「あやめ草」とありますが、この軒に菖蒲を挿すことを【あやめ葺く】とも言いますから、間違いではありません。


和歌の中でしか知ることがなかった、【菖蒲葺く】を実際に見ることが出来て、とても感動しました!



●さて門を潜ると、玄関の軒先には、鍾馗様の日除け幕が下げてあります。


鍾馗様は、魔除けの効験があるとされて、掛け軸や五月人形にもされていますね。



●玄関の式台には、紫陽花の花と兜の置物が飾られていました。


紫陽花は少し時期が早いような気がしますが、お茶席では五月に額紫陽花(ガクアジサイ)を茶花として用います。



●玄関を上がってすぐの五畳敷の間には、杜若(かきつばた)を描いた小屏風が置かれていました。




●煎茶用の茶席の床の間には、軸が掛かっていました。


その軸は、甍(いらか)の上になびく鯉のぼりの墨絵で、「丈夫意気高」(ますらお いきたかし)という言葉が書いてあります。


ますらお【益荒男=丈夫】とは、「立派な男・勇気のある強い男」という意味。


「ひとかどの男というものは、意欲的で活力に満ちている」という事であろう。



●玄関を入って右手側にある奥の間、ここの床の間には、吹き流しと花入に見立てた舟盛りの器が飾ってあります。


鯉のぼりと共に、空にたなびく吹き流しには、魔除けの意味があります。


舟盛りの中には、筍とゼラニウムが活けてありました。


筍は、岩をも砕いて真っ直ぐと伸びるところから、「タケノコのように逞しく素直に育って欲しい」という親心を表しています。


ゼラニウムはアオイ科の植物で、どんなに日照りが続いても根が絶えることがないので、「力強く丈夫に育ってくれ」という願いを表しているのでしょう。



●玄関を上がって左手側の奥の八畳間ですが……ここの床の間には兜・弓矢・太刀の三点が飾ってあり、その後ろには、東照神君家康公の遺訓を書いた金屏風が据えられています。


金屏風には、こう書かれています。


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人の一生は重荷を負うて

遠き道を行くがごとし

急ぐべからず

不自由を常と思えば不足なし

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●最後、縁側近くの畳廊下には、陶器の火鉢にハナショウブが活けてありました。



各季節ごとに、それに相応しい飾り付けをしていた昔の人たちって、現代の我々より心が豊かだったんでしょうね!


では、室内は一通り見学し終えたので、これからお抹茶を頂いてきます!!
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