竹翠亭の呈茶
興正寺の普門園を見学するには、本堂の手前にある納経所で、拝観券を購入しなければならない。
拝観券は500円である。
この拝観券を購入すると、普門園にある竹翠亭にて、呈茶のサービスが受けられるのだ。
竹翠亭には、玄関から縁側まで続く畳廊下を境にして、左右に奥の間が二つある。
この二つの奥の間であれば、どちらでも喫茶は可能だ。
右の奥の間は、腰掛けてお茶を頂ける立礼席(りゅうれいせき)。
濃紺の毛氈が敷いてある左の奥の間は、畳に座ってお薄を頂戴できる。
私は、左の奥の間を選んで、濃紺の毛氈の上へ腰を据えた。
待つほどもなく、お薄と菓子の乗った漆塗りの黒い小長盆が運ばれてきた。
お薄の入った茶碗は、黄瀬戸(きぜと)の沓茶碗(くつちゃわん)である。
沓茶碗とは、胴にくぼみのある長円形のような形をした茶碗のこと。
昔、公卿たちが蹴鞠(けまり)をする際に履いた、沓(ふみ)という靴に形が似ていることから、その名がついた。
さてお菓子の方は、呈茶のサービスとしては珍しく、主菓子と干菓子の二種類が付いてきた!
呈茶では、抹茶と主菓子の組合せが一般的である。
ちなみに、主菓子(おもがし)とは餡を用いたお菓子のこと。
また干菓子(ひがし)とは、粉や砂糖を固めて作った水分の少ないお菓子のことである。
干菓子が一つオマケで付いてきたので、得をした気分だ!
主菓子は、 蒸し菓子と浮島と羊羮を重ねた棹菓子(さおがし)で、銘は『花あやめ』という。
干菓子は、マサカリを担いだ金太郎を象った打ち物である。
打ち物とは、穀類の粉に砂糖を加え、木型に詰めて固めたものを打ち出したお菓子のことだ。
お給仕の方にお聞きしたところ、この金太郎の干菓子は、わざわざ京都の和菓子屋さんから取り寄せたとのこと。
「花あやめ」という名前の主菓子に、金太郎の形をした干菓子、それに新緑を連想させる抹茶と、季節感を十分に楽しめた一服であった!