残念めし
グルメ日記である以上、自分が「ウマい!」と感じた食べ物のことだけを書きたい。
しかしながら、外食をした際、しばしばハズレくじを引くことがある!
外食時に、「食べてみてガッカリした」という経験は、私だけに限らず皆様にもあるはず。
悪い意味で、我々の期待を裏切ってくれる料理のことを、私は『残念めし』と呼びたい!
私は、この『残念めし』を以下のように定義する。
1、他者からの異論が出ないほどマズいもの。
2、「マズい」とまでは言えないが、それほど旨くはないもの。
3、ビジュアル的には申し分は無いものの、実食してみたらさして旨くはなかったもの(見かけ倒しの料理)。
4、質あるいは量のどちらかが、その値段に見合うだけの価値がない料理(コスパの低い料理)。
以上四つの項目のうち、どれか一つでも該当すれば、『残念めし』となる!
『残念めし』は、日記の題材にはならないので、【没ネタ】とされて今まで日の目を見なかった。
問答無用で没とされ、日陰の身に甘んじてきた『残念めし』を、安らかに成仏させてやる義務が、私にはあると思う。
よって、不本意ながら今回は、『残念めし』について書くことにした。
なお、味覚には個人差があるので、その点を踏まえた上で、以下の文章を読んで頂きたい!
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●『住よし』の「すき焼き風きしめん」
『住よし』は、JR名古屋駅の各在来線のホーム及び新幹線の上り下りのホームにある、立ち食いスタイルのきしめん屋だ。
かつて、アメトークでも「美味しいきしめん屋」として、紹介されたことがある。
確かに、それなりに旨い!殊に、だし汁がウマいのだ!
だから、ネギと花かつおだけが乗った、【素うどん】ならぬ【素きしめん】であっても、その真価はうかがえるはず!
券売機を見ていくと、350円の「きしめん」から始まって、400円台と500円台の商品が続く。
400円台のきしめんたちは、『住よし』の主力商品である!
この400円台のメニューたちを、社会人に例えるなら、安月給で酷使される20代の若手社員、と言ったところであろうか。
一番高い商品は、870円の「名古屋コーチンきしめん」である。
「どれにしようか?」と、券売機の前で迷っている私の目が、一枚のポスターを捉えた!
それは、美味しそうなきしめんの上に、すき焼きの具がたくさん盛られているポスターであった!
『すき焼き風きしめん(620円 )』
よし!これに決定だ!!
購入した券をカウンターへ置くと、さっそく調理が始まる。
サッと湯通しをして、しっかりと湯切りをしたきしめんを丼へと移し、住よし自慢のだし汁を、なみなみと注ぐ。
この間に温めておいた、すき焼きのレトルトパックを湯の中から取り出して封を切り、だし汁に浸かったきしめんの上へドボドボと投入する。
「お待ちどうさま!」の声と共に、私の目の前へ「すき焼き風きしめん」が置かれた。
まるで丼の中から、金色(こんじき)の光を放っているかのように見える。
私の隣で、350円のきしめんを黙々と啜る男が哀れに思えてきた。
優越感に浸る私は、誇らしげな表情をしつつ、丼の縁に唇をつけ、きしめんの汁をひとくち啜る!
「うっ!?」、思わず驚きの声が漏れた。
「住よし」のだし汁は、かつお節とムロ節でとった無化調のツユである!
すき焼きの甘辛いタレが勝ち過ぎて、住よしご自慢のだし汁に、壊滅的な打撃を与えているのだ!
すき焼きの甘辛ダレに侵食された、きしめんのだし汁は、青息吐息虫の息である!
まるで、赤潮に汚染された海のようだ!
まあ、牛すきとか豚すきの後にうどんを入れた「うどんすき」、いやいや「きしめんすき」だと思えば、決してマズくはないのだが……。
それにしても、あの美味しいだし汁が、ここまで台無しになるとは、残念で仕方がない!
こんな事になるなら、隣の男のように、350円のきしめんにしておけば良かった。
『住よし』の名誉のために一言申し添えておくが……この【すき焼き風きしめん】は、なかなか人気のあるメニューらしい。
※味覚には、個人差があります。