茅沼
50代前半  千葉県
2015/03/07 3:04
茅沼
何年前だろう。


私は北海道は、釧網線・茅沼駅に降り立っていた。


釧路から数駅。


網走に行くローカル線。


あるものを目当てに。


一面一線のプラットホーム。


典型的なローカル線の無人駅だ。


私を下ろした一両だけのディーゼルカーは北に向かって走っていった。


降車客は私だけ。


ディーゼルカーが去った後は静寂だけが待っていた。


ホームで伸びをする。


深呼吸もする。


吐く息が白い。


ホームの目の前には釧路湿原が広がっている。


何故このようなローカル線の無人駅に降りたのか。


その数ヵ月前にNHKアーカイブスを見て、いてもたってもいられなくなった私は、列車を何本か乗り継いでこの駅に降り立ったのだ。


そう、丹頂に会うために。


丹頂に会うためだけに。


かつての茅沼駅は有人駅であった。


その代々の駅長が丹頂鶴に餌付けをして、駅の目の前の湿原に丹頂鶴が来るようになったのだ。


そう、私は丹頂鶴に会うためだけに、茅沼駅に来たのだ。


ホームの端から丹頂に手を振ってみる。


もちろん、反応なんてない。


丹頂は、私の事など関係無しに、ダンスを踊っていた。


丹頂観察に飽きた私は、駅から少し南の湖に向かった。


湖は一面氷結しており、辺りは静寂に包まれている。


帰りの釧路行きの列車が来るまでまだ時間がある。


手持ち無沙汰な私は、再び駅に向かう。


こうやって、北海道の無人駅で過ごすのが好きだ。


暫くして、列車がやって来た。


列車に乗り込み、車内を見回す。


列車の中では、地元の高校生たちが賑やかだ。


まるで、高校のホームルームがそのまま車内で行われてるようだ。


右側に釧路湿原の夕陽を見ながら、列車は程なくして終着、釧路駅に着いた。


さて、今日は何を食べようかな。


釧路といったら炉端焼きだよな。


そんなことを考えながら、私はタクシー乗り場に向かった。













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