寝台特急《北斗星》遥かなる旅路1 (さすらい旅情編)
とある日の事。
私は朝からそわそわしていた。
そう、今日は寝台特急北斗星に乗車する日。
夕方に、身支度し少し早いけど、上野駅に向かった。
上野駅地平13番ホーム。
いわゆる、《トウサンバン》だ。
18時40分頃、
『トウサンバン~トウサンバン~回1列車接近』
業務放送があり、尾久からの推進回送列車が入線してきた。
上野駅は、機関車の付け替え線が無いため、尾久からわざわざバックしてやって来る。
入線後ほどなくして、自分の個室寝台に荷物を置いて先頭の蒼い機関車に向かった。
機関車では多くの乗客やら、鉄道ファンの人が盛んにフラッシュをたいていた。
記念撮影をしている親子。
交互に撮りあってるカップル。
時おり、機関車の放熱ファンの音がホームに響く。
写真を、撮っているのも束の間、出発時刻となった。
私の今日の寝床はB寝台のソロ。
軽い衝動を伴いながら、列車は静かに滑るように発車した。
開け放った個室のドア越しに、左側のホームを見ると手を降るファンの人たち。
羨ましそうにこちらを見ている。
缶ビールを開け、車窓を眺める。
《ハイケンスのセレナーデが流れる》
『皆様、この列車は札幌行きの寝台特急・北斗星号でございます。本日は御乗車頂き、真にありがとうございます。列車は定刻通りに発車しました。これから、停まります停車駅と時刻をお知らせいたします。大宮19時○分、宇都宮・・・終点の札幌には、明朝の11時○分の到着です。』
並走する京浜東北線の車内の人と目があった気がした。
あちらは、日常を過ごしてる。
こちらは、非日常を過ごしてる。
満員電車の脇を、エレガントな寝台特急が静静と、進んで行く。
程なくして、最初の停車駅の大宮に着いた。
ホームにはやはり、帰宅中の客でごった返していた。
カーテン越しにホームを一瞥する。
スマートフォンを操作しながら、写真を撮る人。
まるで、無関心にうつむいている人々。
列車に指を指して興奮している高校生のグループ。
皆それぞれ、目の前の珍客と、対峙している。
大宮を発車した頃には、一本目のビールを飲み終え、二本目を開けた。
今日は食堂車の予約はしていない。
パブタイムが始まるまで時間をもて余すな。
宇都宮を、過ぎた辺りで食堂車より案内が入った。
『食堂車グランシャリオより、パブタイムのお知らせです。食堂車グランシャリオでは、21時よりパブタイムの営業を開始します。軽食類やお酒を御用意して皆様のお越しをお待ちしております。』
NREスタッフの節回しが心地よい。
パブタイム開始前に結構酔ってしまった私は、いつの間にかに寝てしまったようだ。
カーテン越しに車窓を見ると、闇しかない。
下の方を見ると、地面は白く雪がある。
雪が列車からの明かりを反射している。
時計を見ると、すでに日付は変わっている。
そろそろ、青森県に入るな。
再び、うとうとした私が次に起きたのは、マグネシウムライトの明かりの下に、テールランプを片方だけつけた赤い機関車を見た時だった。
そう、列車は青森駅にゆっくりと入線していた。
続く。