寝台特急《北斗星》遥かなる旅路2 (津軽海峡冬景色)
ある日の未明。
私を乗せた寝台特急北斗星は、深夜の青森駅に、ゆっくりと確実に入線していた。
ここで、機関車の交換をする。
昔の連絡船乗り場の面影を残した青森駅は、いわゆる行き止まり式のホームだ。
北斗星は始発から、終点までのうち三つの駅で行き止まり式のホームの駅に寄る。
始発の上野駅。
途中の青森駅と函館駅。
行き止まり式のホームは明確に旅の雰囲気がある。
人は、そこに終着駅を見るのだろう。
遠くから、ピッと、汽笛がする。
どうやら今まで一番後ろだった方に機関車をつけているらしい。
床下の配管からは、空気が流れる音がする。
深夜の青森駅は、ただただ静かだ。
自分の目の高さに《あおもり》と、駅名標がある。
そろそろ、反対側に出発かなと思っても、なかなか出発しない。
機関車の交換は、とっくに終わっているはずなのに。
昨日、車掌さんから聞いた情報だと、北海道内の悪天候で上りの列車が遅れているらしい。
退屈になった私が個室の扉を開けた時に、確かに向こう側のホームに静かに入ってくる漆黒の列車の姿が見えた。
正確には漆黒ではなく、明かりの下だと深緑の、車体であることがはっきりとわかった。
大阪行きの《トワイライトエクスプレス》だ。
定刻であれば、青森駅には22時位に到着してるはずが、4時間以上遅れているらしい。
これからの、旅路の厳しさを予感させる、深夜のスーパースターとの離合。
東の横綱の《北斗星》と、西の横綱の《トワイライトエクスプレス》の暫しの逢瀬。
北海道内の悪天候が深夜の青森駅を、ドラマティックな舞台に変えた。
『ガツン』と、軽い衝動と共に先程とは逆方向に列車が動き始めた。
どうやら、トワイライトエクスプレスが青森駅に入線したことにより、信号が変わって津軽海峡線に進入出来るようになったらしい。
走り始めて暫くすると、左側に車輌基地が見えた。
うすぼんやりとしか見えないが、首都圏で使われていた見馴れた列車が何本もある。
ここは、列車の墓場なのだろうか?
そんなことを気にしてるうちに、トンネルを何本も通過し、そのうちトンネルが途切れなくなった。
車内は『コーッ』という音だけが響いてる。
カーテンを開けると外側が結露している。
青函トンネルだ。
トンネルの途中で、列車とすれ違う。
上野行きの北斗星だろうか?
そんなことを気にしてるうちに、再び眠りについたらしい。
朝、ハイケンスノのセレナーデのチャイムと共に目覚める。
寝台列車では理想的な目覚めだ。
『皆様、おはようございます。列車は定刻より約1時間遅れで運行中です。まもなく函館駅に到着致します。途中青森駅にて車掌が交代しております。担当車掌はJR北海道○○です。これからの停車駅と時刻をお知らせ致します。函館、森、八雲、長万部、洞爺、伊達紋別、東室蘭、登別、苫小牧、南千歳、終着札幌・・・』
《終点》ではなく、《終着》と呼ぶあたりに北海道の車掌さんに変わった事を意識させられる。
カーテンを開けると、海越しに函館山が見える。
どうやら、そろそろ函館に到着するようだ。
続く。